【9月19日 AFP】国際通貨基金(IMF)のドミニク・ストロスカーン(Dominique Strauss-Kahn)前専務理事(62)は18日、仏TF1テレビのインタビューに応じ、米ニューヨーク(New York)の高級ホテルでの女性従業員との接触について「道徳的な不手際」だったことを認めたが、一方で性的暴行を加えようとした事実はなかったとの主張を繰り返した。

 社会党の政治家で経済学者のストロスカーン氏が公の場で語ったのは、ニューヨークから帰国した後では初めて。同氏はフランスでも別の女性から性的暴行をめぐって告訴されており、その事件で当局の取り調べを受けた後としても初めて公の場に姿を現した。

 妻の友人でもあるジャーナリストのクレア・シャザル(Claire Chazal)氏からインタビューを受けたストロスカーン氏は、闘争的な口調ながら誠実な妻とフランス国民をともに失望させてしまったと述べて自身の体面を保とうとした一方、2012年の仏大統領選への出馬の望みを捨てたことを認め、当面は自らが政界で活動する可能性はないと述べた。また告訴されている女性2人への性的暴行については否定した。

■「追及が甘い」、多くの視聴者は不満

 ストロスカーン氏は、5月14日、マンハッタン(Manhattan)のソフィテル(Sofitel)ホテルのスイートルーム2806号室で起きたナフィサトウ・ディアロ(Nafissatou Diallo)さんとの7分間の遭遇について、「起きたことの中には暴力も強要もなかった。犯罪行為はなかった」ときっぱりと語った。

 同氏は、「誇りに思えない道徳的な不手際」があったと述べたが、警察はディアロさんの体から「ひっかき傷も外傷も暴力の痕跡は何一つ」発見しなかったと主張した。

 ストロスカーン氏はスイートルームで起きたことについてこれ以上詳しく語らず、シャザル氏も説明を迫るようなことはしなかった。多くの視聴者は不満に思ったようで、TF1はストロスカーン氏への追及が甘いと批判する書き込みがツイッター(Twitter)に相次いだ。

 ディアロさんの弁護士は、検察の報告書には暴力を受けたという被害者の証言と一致する医学的な証拠が含まれており、ストロスカーン氏がこの報告書を読んでいたのか疑わしいと述べるとともに、今回のインタビューは「(ストロスカーン氏の)広報活動の練習のようなもの」と批判した。

■仏大統領選には関与せず

 フランス人作家で家族ぐるみの友人の娘でもある、ストロスカーン氏より30歳年下のトリスタン・バノン(Tristane Banon)氏が、2003年にパリ(Paris)の共同住宅でストロスカーン氏に性的暴行を加えられそうになったとして告訴している事件についても、ストロスカーン氏は、バノン氏を襲った事実を否定した。

 ストロスカーン氏は、ニューヨークの事件と同じく、バノン氏となんらかの接触があったことは否定しなかったものの、「私は証人として聴取を受けた。その聴取では攻撃や暴行は行われなかったと真実を伝え、それ以上は語らないと告げた」と語り、報道されているのは「想像による中傷」だと述べた。

 性的暴行疑惑は否定したものの、ストロスカーン氏は、自身が来年の大統領選挙の候補者でないことは「明らかだ」と認め、今後の社会党の大統領選予備選をめぐる議論にも関与しないと語った。代わりに、政治家としてのキャリアを再開するかどうかを決めるために「時間をかけて内省する」と述べた。(c)AFP/Dave Clark