【8月11日 AFP】英国で拡大している暴動の背景には、何があるのか。11日発表された世論調査で、英政府の緊縮財政政策に原因があると考えている英国民はわずか8%に過ぎないことが明らかになった。

 警官による男性射殺事件をきっかけにロンドン(London)で発生した暴動は各地に飛び火し、英国史上例を見ない大規模な暴動に発展している。原因の特定が急がれる中、英大衆紙サン(Sun)と世論調査会社YouGovが8~9日に2534人を対象に実施した世論調査で、多くの国民は国内の不良グループ文化が一連の暴動の背景にあると見ていることが分かった。

 デービッド・キャメロン(David Cameron)首相率いる保守・自民の連立政権は財政赤字削減のため、大規模な支出削減へと舵を切った。だが、この政策転換が暴動の直接的な原因だと考えている人は回答者の8%にとどまり、失業問題が主な原因との回答は5%だった。また、人種間の対立が背景にあるとの回答も5%程度にとどまった。

 一方、42%が犯罪行為の蔓延、26%が不良グループの台頭を理由にあげた。

 暴動をめぐるキャメロン首相の対応については、57%が不満を示した。また、ボリス・ジョンソン(Boris Johnson)ロンドン市長の対応についても54%が不満だと答えた。暴動発生時、2人は休暇中で、ロンドンに戻ったのは発生から3日後だった。

 暴動の対処に負われる警察官たちに対しては多くの同情が寄せられ、回答者の大多数が催涙弾や騎馬警官隊、プラスチック弾の使用を支持。実弾を使用すべきとの回答も30%以上にのぼった。

■若者だけでなく40代も、暴徒たちの多様な横顔

 一連の暴動での逮捕者は1000人余りに上っている。多くは崩壊家庭出身の「社会から取り残された」若者たちだが、10日までにロンドンの治安判事裁判所で行われた逮捕者の審問の内容からは、暴徒たちが「貧しい若者」だけにとどまらない複雑な実態が浮き彫りになりつつある。

 これまで暴動に荷担したとして逮捕され出廷した中には、レストランの料理人(43)とその兄(47)、オペラハウスの新任の守衛(19)、大学生(20)などが含まれ、驚きをもって受け止められている。

 英紙ガーディアン(Guardian)は「誰が暴動を起こしているのか? この問いに簡単な答えはない」と指摘。参加者の多くは貧困層の出身だが、属する人種グループは多様で、年齢層も10代~40代と幅広く、女性も加わっていたと伝えた。

 暴動の背景をさぐる議論が高まるなか、評論家らの間では、警察が若者集団の暴力行為を取り締まりきれなくなったところへ便乗して略奪行為が広がっているとの見方が強い。

 いずれにせよ、暴動の中心に貧困層の若者らがいることに疑いの余地はなく、貧困対策を怠ってきた長期間のつけが暴動となって現れたとの指摘もある。(c)AFP

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