【5月31日 AFP】メキシコで前週発生した乱射事件のさなか、現場近くの幼稚園で園児たちに歌を聞かせて落ち着かせ、危険を乗り切った教諭が30日、州政府に表彰された。

 事件は27日、メキシコ北東部のヌエボレオン(Nuevo Leon)州の州都モンテレイ(Monterrey)で起きた。この幼稚園の近くのタクシー乗り場で男が銃を乱射し、5人が死亡した。

 この銃声が響いている間、アルフォンソ・レジェス(Alfonso Reyes)幼稚園のマルタ・イベッテ・リベラ・アラニス(Martha Ivette Rivera Alanis)教諭は、5~6歳の園児たちのグループに歌を歌って聞かせながら、床に伏せさせた。この様子を撮影したビデオがインターネットで話題になった。

 ロドリゴ・メディナ・デ・ラ・クルス(Rodrigo Medina de la Cruz)同州知事は30日、「勇敢かつ献身的に危険な状況に立ち向かってくれた。私たちの州、私たちの国が経験しているこの困難な時に、進むべき道を身をもって指し示してくれた」と称賛してアラニス教諭に額に入った表彰状を手渡した。

 ヌエボレオン州の経済の中心地である州都モンテレイはかつてメキシコで最も安全な地域と目されていたが、近年になって「湾岸カルテル(Gulf Cartel)」や「セタス(Zetas)」などの麻薬密輸組織絡みの抗争による銃撃や殺人事件が相次いでいる。

 麻薬絡みの暴力が激化したメキシコでは2006年以降、全国の死者は3万7000人にも上っており、同年、フェリペ・カルデロン(Felipe Calderon)大統領は軍を投入した大規模な制圧作戦を開始した。(c)AFP