【5月17日 AFP】ウェブカメラの前でフィリピン人女性たちに裸でパフォーマンスをさせたとして、スウェーデン人2人がフィリピンの裁判所に前週、「人身売買」の罪で終身刑を言い渡された。2人は強く無罪を主張しており、控訴する構えだ。

 エミル・アンドレアス・ソレモ(Emil Andreas Solemo)被告(35)とボー・ステファン・ゼーデルホルム(Bo Stefan Sederholm)被告(31)は、17人の女性にウェブカメラの前で裸でパフォーマンスをさせ、その映像をフィリピン国外の顧客に配信していたとされている。

 フィリピン政府は、この判決について「人身売買との闘いにおける画期的な勝利」だと呼んで評価した。フィリピンでは近年、同様の配信ビジネスがサイバーセックス産業として急成長しているが、終身刑を下した判例は今回が初めてだ。

 しかし被告2人は、証拠の大半はねつ造されたり、不正入手されたものだと主張している。またフィリピン国内では売春がまん延している中、自分たちがインターネットポルノで重刑を科されたことに衝撃を受けているようだ。

 被告2人は12日、2009年4月の逮捕以降、拘束されているフィリピン南部カガヤン・デ・オロ(Cagayan de Oro)の拘置所でAFPの取材に応じた。ソレモ被告は「私たちは人身売買は行っていない」と述べ、ゼーデルホルム被告は、フィリピンのメディアが2人を「現代の奴隷商人」と呼んでいることに対し「女性たちは強制されてやったんじゃない」と反論した。

 ソレモ被告によると、2人はITコンサルタントで、カガヤン・デ・オロ市内にあるサイバーセックス・ショップにコンピューターシステムを設置するために雇われていたという。2人には、そのサイバーセックス・ショップを経営し、女性たちを雇っていた容疑が掛けられているが、2人とも逮捕される1か月前にフィリピン入りしたばかりだったと主張している。一方で、誰に雇用されていたのかについては、そろって口を閉ざした。

 また2人は、働いていたのは成人女性だけだと説明したが、検察も未成年が事件に関与したとはみていない。

 さらに2人は、自分たちに対する容疑自体が偽善的だと非難した。「(サイバーセックスが)屈辱的でみじめな行為だと言う人もいる。けれど、フィリピンのどこの都市に行っても、露出度の高い格好で女性たちがポールダンスを踊っているのが見られるじゃないか。バカげている。売春をおおっぴらにやっているところもあるのに。欧米だったら、ウェブカメラの前で服を脱ぐことは、成人ならば違法ではないし、人種売買などとは見なされることはない」(ソレモ被告)

 ゼーデルホルム被告は、自分たちはいけにえにされたのだと主張する。米国が人身売買対策に積極的でない国のブラックリストにフィリピンを入れたため、フィリピン当局は米国に実績を示したかったのだと述べる。

 しかし、判決を言い渡した裁判官は、フィリピンの貧しい女性を性的に搾取した者は誰であれ処罰されねばならないと語る。判決文には「フィリピン女性に敬意を払わないこと、それにわが国の法律に違反することは、この法廷においては最大限の非難に値する」と記された。

 事件の証拠集めに協力した現地の女性権利団体代表のビバリー・ムスリ(Beverly Musli)氏も、2人は有罪に値すると述べる。「被害女性はフィリピン全土から集められ、南部へ移送されたのだから人身売買であることに変わりはない」と、弁護士でもあるムスリ氏は語った。「私たちは女性へのあらゆる形態の暴力を阻止するために全力を尽くしている」

 被告2人は上訴審で無罪を勝ち取るつもりであきらめてはいない。しかし2人は、殺人や麻薬密売で起訴されている被告5人と一緒に小さな房に入っており、混み合った房内で身体的・精神的に苦しんでいる様子だった。「目の覚めることのない悪夢よりもひどい。今後20~25年も刑務所内で過ごさなければならないのかどうか、分からない状況に置かれているという悪夢だ」と、ソレモ被告は語った。(c)AFP/Cecil Morella