【3月25日 AFP】ベトナムで警察幹部が、赤信号中に走行するのを拒否したタクシー運転手に襲いかかり、撃つぞと脅す事件があった。

 24日の国営紙トイチェー(Tuoi Tre)によると、タクシー運転手ド・コック・タイさんは20日の日曜日の夜、メコンデルタ(Mekong Delta)地帯のカントー(Can Tho)市で乗せた客に2回、赤信号を無視するよう命じられた。ベトナムの運転者はよく信号違反をするが、タイさんは信号を守ると言い張った。すると、客はハンドルをつかみ、撃つぞと脅し、さらにベルトを使ってタイさんを襲った。

 2人が口論していたのは警察署の前で、警官が署内で2人に話を聞いた。すると、客は隣のハウザン(Hau Giang)省の交通警察隊のブイ・ミン・タン副隊長であることが分かった。「タン副隊長は警官も脅し、1人には部屋の中で土下座して謝るよう要求した」という。

 トイチェー紙の取材に応じたタン副隊長は、タクシーに乗る前、ワインとビールを飲んでいたと語った。一方、事件が起こったカントー市警察の交通係も、隣のハウザン省の交通警察もAFPの取材に応じなかった。タン副隊長が所属するハウザン省の交通警察隊のトップは、副隊長の父親だと報道されている。

 ベトナムの交通警官は「腐敗しきっている」と、市民の評判がすこぶる悪い。国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(Human Rights Watch)は2010年の報告書の中で、「広範囲で行われている警官の残虐行為」について調査するようベトナム政府に要請している。同団体によるとその前年、ベトナムからは警官による19件の暴力事件と15人の死亡事例が報告されている。(c)AFP