【3月25日 AFP】インドでいま、正規の免許を持たないパイロットが旅客機を操縦している事実が相次いで発覚し、問題となっている。

■事故で表沙汰に、フラッグキャリアでも・・・

「偽パイロット騒動」は今年1月、西部の人気観光地ゴア(Goa)で、乗客を満載した旅客機が機首から着陸する大事故を起こしたことがきっかけで露見した。インドで急成長中の格安航空会社インディゴー(IndiGo)の事故機を操縦していた女性パイロットの資格証明書は、偽造されたものだった。パイロットは解雇され、逮捕された。

 その後さらに、少なくとも5人の「偽パイロット」が逮捕された。これらの「偽パイロット」が操縦桿を握っていた航空会社は、格安航空会社スパイスジェット(SpiceJet)や地域航空会社MDLRのほか、フラッグキャリアである国営エア・インディア(Air India)も含まれている。

 事件は、あらゆる場面で贈収賄が浸透しているインドでは、高度な技術が求められる職業の資格免許すら、金を出せば買えるという事実を明るみに出した。

 利用者の間では、訓練を終了していない「偽パイロット」が自分たちの命を握っているのではとの不安と、近年まれに見るペースで大量のパイロットを雇用している航空会社に対する不信感が高まっている。

■西部の養成校に疑惑、指導記録改ざんも

 インドでパイロットの資格試験を担当する民間航空総局(Directorate General Civil AviationDGCA)は、民間航空会社のパイロット4000人の資格について、調査を行うと発表した。
 
 今後、逮捕者が増えると予想されるなか、10年前に同国西部で開校したラジャスタン州立航空学校(Rajasthan State Flying School)に注目が集まっている。21日逮捕されたスパイスジェットに勤務していたパイロット2人が、同校の卒業生だったためだ。

 ラジャスタン州の汚職撲滅対策当局者はAFPに対し、「パイロット免許取得には、少なくとも200時間の飛行訓練が必要だ。だが同校の卒業生には、50~60時間しか終了していない者もいる」と語った。

 警察は、同校の指導記録を元に、同校と卒業生に対する捜査を進めている。記録では飛行訓練が実施されたことになっていても、実際には飛行していない例が見つかっている。同校の指導教官に100万ルピー(約180万円)を支払ったのに免許を取得させてもらえなかったと主張する人物の証言もあるという。

■資格付与機関の「お役所仕事」も一因か

 航空各社は、「偽免許」騒動の責任はDGCAにあると非難している。DGCAは22日、特別チームを設置して全国40校を対象に調査を行うと発表した。

 インド、南アフリカ、米国の3か国のパイロット免許を持つある地元国会議員は、「偽パイロット」問題は構造的なものだと指摘する。DGCAは組織が巨大になりすぎ、正規のパイロットですら手続きに数か月、時には数年かかるという。その「お役所仕事ぶり」が贈収賄を助長しているのだというのだ。

 インドでは自動車免許、パスポート、政府助成の食料用の配給カード、大学学位、医師免許など、ありとあらゆるものを金で買う贈収賄行為が横行している。(c)AFP/Adam Plowright