【2月8日 AFP】インドネシアの中ジャワ(Central Java)州で8日、イスラムを冒とくした罪で有罪となったキリスト教徒の男に死刑を求める群衆が、2か所のキリスト教会に放火し、警官隊と衝突した。同国では、6日にも暴徒化したイスラム教徒がイスラム教の小宗派信徒らを襲撃して殺害する事件が起きたばかりだ。

 イスラム教を中傷するチラシを配付した罪に問われた裁判で、アントニウス・バウェンガン(Antonius Bawengan)受刑者(58)は同罪の最高刑となる禁錮5年の有罪判決を言い渡された。

 しかし、この判決が軽すぎると抗議する群衆約1500人が裁判所前に集まり、警官隊と衝突した。群衆は警官隊に投石を行い、警官隊は催涙弾や威嚇射撃で応じた。群衆は裁判所前で「殺せ!殺せ!」と叫び、「燃やせ!燃やせ!」と叫び、教会に火を放った。

■6日にも宗教からむ集団リンチ事件

 インドネシアは世界最多のイスラム教徒が暮らす国だが、6日にも暴徒化したイスラム教徒による集団リンチ事件が発生したばかりで、インドネシア政府に対応を求める声が高まっている。

 事件があったのは西ジャワ(West Java)州。イスラム教の小宗派「アフマディア(Ahmadiyah)」の信徒らが群衆に襲撃された。

 アフマディア派は、預言者ムハンマド(Mohammed)ではなく同宗派の開祖であるミールザー・グラーム・アフマド(Mirza Ghulam Ahmad)師がイスラム教の最後の預言者だとする宗派で、2008年にインドネシア政府に布教を違法化されている。

 群衆による集団リンチはビデオに収録されており、群衆は、なたや棒、石を手に「アラーは偉大なり」と叫びながらアフマディア派信徒に襲いかかり、警官の目の前で、石や棒で暴行して殺害した後も暴行を繰り返した。

 この事件で、アフマディア派信徒3人が死亡、5人が重傷を負い、2人が行方不明となっている。国際人権団体は、群衆による殺害を警察が阻止できなかった原因の即時調査を求めている。

 インドネシアの憲法は信教の自由を保障しているものの、イスラム保守派の圧力を受けてインドネシア政府は2008年にアフマディアの布教を禁止した。これに対して複数の人権団体が、自警団による暴力に法的根拠が与えられてしまったとして、布教禁止の即時撤回を求めている。

 また、活動家らは、インドネシアのスルヤダルマ・アリ(Suryadharma Ali)宗教相が、アフマディア派の信徒らがイスラム教を捨てれば安全になれると語ったことに対しても批判している。アリ宗教相は前年にも、アフマディアの全面禁止を訴えていた。(c)AFP

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