【3月24日 AFP】第2次世界大戦中、ドイツのナチス(Nazi)親衛隊(SS)の暗殺部隊に所属し、ナチス占領下のオランダで民間人3人を殺害した88歳の被告に対し、ドイツ、ノルトライン・ウェストファーレン(Nordrhein-Westfalen)州アーヘン(Aachen)の裁判所は23日、終身刑を言い渡した。

 赤と白のジャンパーにグレーのズボン、靴下の上からサンダルをはいた格好で出廷したハインリッヒ・ボーア(Heinrich Boere)被告は沈痛な面持ちで車いすに乗り、判決が言い渡されても表情を変えなかった。一方、弁護団はすぐに控訴する意向を明らかにした。

 被告はオランダ人の父、ドイツ人の母の元に生まれ、オランダで育った。第2次大戦中、オランダを占領していたナチスの親衛隊で特殊部隊に属し、レジスタンス(抵抗)運動の一環で攻撃を仕掛けた民間人3人を、「反ドイツ的」な行為に対する報復として殺害した。

 ボーア被告を含む部隊は、Fritz Bickneseさんを薬局で勤務中に、また自転車店経営者のTeunis de Grootさんを自宅で狙撃。さらにFrans-Willem Kustersさんは車で連れ込まれた森で射殺された。

 しかしボーア被告は戦犯収容所への収監をまぬがれ、1947年にはドイツ国内の生地に帰った。49年には欠席裁判で死刑を宣告されたが、その後、判決は終身刑に減刑された。しかし被告は以後、法の裁きをすべて回避してきた。

 現在はドイツの養護施設で暮らすボーア被告は、これまでに何度かこの殺人事件について自分から語ってきた。殺人を拒んでいたら自分が強制収容所へ送られる危険があったと主張してきたが、裁判所はこれを認めなかった。弁護団は49年の判決の存在を根拠に、今回の裁判は「一事不再理の原則」に反するとも主張した。連邦裁判所での控訴審でも同じ主張をするとみられる。

 77歳になるde Grootさんの息子は判決後、AFPの取材に対し、顔をゆがめて笑顔を作りながら「ようやく彼をつかまえた。時間はかかったが、一生野放しのままよりはましだ。これから死ぬまでたっぷりかかってほしい」と述べた。遺族はほかにBickneseさんの息子と孫も傍聴した。(c)AFP/Simon Sturdee