【12月28日 AFP】前月、知事選をめぐる57人の大量殺人事件があったフィリピンで28日、覆面をした4人の武装集団が地方政治家や支持者ら約50人が乗ったバスを銃撃し、この政治家が殺害された。今回も選挙がらみの事件とみられ、暴力の応酬が長く続いているフィリピンの政治的風土があらわになった。

 事件が起きたのはフィリピン北部の北イロコス(Ilocos Norte)州で、標的とされたバスには同州の野党、国民党(Nationalista Party)のジョーン・カニエテ(Joen Caniete)候補と支持者ら50人が乗っており、カニエテ候補は被弾して即死した。

 カニエテ候補は2010年5月に行われる総選挙で、同州Dingras市の市議会選に出馬を予定しており、この日も同市でのクリスマス・パーティーの帰りだった。
 
 警察幹部によると、ほかには6人が負傷した。うち2人は村の役人、1人は警察の護衛係だった。

 国民党のジルベール・レムリャ(Gilbert Remulla)広報担当は直後の声明で、「政治的暴力と野放しの文化に即刻終止符を打つ解決法を追求する。2010年の総選挙に出馬しているすべての政党、候補にクリーンで誠実で平和な選挙戦を求める」と怒りを表明した。

 同党を率いる富豪のマニー・ビリヤール(Manny Villar)上院議員は2010年総選挙の大統領候補で、各世論調査では2位につけている。
 
 また北イロコス州の選挙監視委員は、これ以上の暴力事件や不正を防ぐために選挙期間中、Dingras市には政府の特別な規制が必要だと述べた。同市では2か月前にも市長選への出馬を予定していた市幹部が狙撃され、死亡している。

 北イロコス州はフィリピンを独裁支配したフェルディナンド・マルコス(Ferdinand Marcos)元大統領一族の地元として知られる。同名のマルコス氏の息子は現在同州選出の下院議員で、2010年の選挙では上院へのくら替えを狙っている。マルコス氏の息子に代わって、マルコス元大統領の妻イメルダ・マルコス(Imelda Marcos)元大統領夫人が下院への出馬を予定しており、政治評論家らは当選を確実視している。(c)AFP