【12月9日 AFP】薬物注射による死刑執行の失敗を受けて新たな執行方法を模索していた米オハイオ州(Ohio)は8日、薬物を従来の3種類ではなく1種類だけ使用するという全米初の執行を行った。

 死刑が執行されたのは、1991年に22歳の女性の殺害・遺体損壊の罪で死刑判決を受けたケネス・ビロス(Kenneth Biros)死刑囚(51)。注射から9分後に、死亡が確認された。刑務所関係者は、地元紙コロンバス・ディスパッチ(Columbus Dispatch)に対し、「新しい執行法は、何ら問題なく、予定通り機能した」と語った。

 それぞれ麻酔、筋肉のまひ、心臓を止めるという役割をもつ薬物3種の注射による執行法は、死刑が実施されている全米35州のうち34州で採用されている。だが同州は、麻酔薬のチオペンタール・ナトリウムのみを注射するという方法に改めた。ただしその量は、動物を安楽死させる場合と同等の、通常の2.5倍にした。

 さらに、静脈への注射が失敗した場合は、大量の鎮静剤と鎮痛剤を筋肉に直接注射するとした。

 この新たな執行法については、痛みが少なく、より人道的だと賛成する声があがる一方で、ビロス死刑囚の弁護士は「一度も試されたことがない方法で行うのは人体実験にほかならない」と非難していた。

 なおビロス死刑囚は、新たな執行法がどういった結果を引き起こすかは分かっておらず、これは「残酷で異常な刑罰」を禁止する憲法に違反するとして、連邦最高裁判所に対し執行停止を訴えていたが、裁判所側はこれを却下。この影響で執行は1時間遅延した。

 同州では今年9月、14歳の少女を強姦し殺害した罪で死刑判決を受けたロメル・ブルーム(Romell Broom)死刑囚(53)に対する死刑執行が、薬物を注射する静脈が見つからなかったために延期されるという事態が発生した。死刑執行官は腕や脚などのあらゆる場所に18回にわたり注射針を刺したが、2時間かかっても静脈が見つからなかった。
 
 これを機に、同州におけるすべての死刑執行はいったん停止され、新たな方法が検討されることとなった。(c)AFP

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