【11月13日 AFP】犯罪発生率の高さが世界有数とされる南アフリカで、殺人犯を追跡中の警察官が3歳の男児を誤って射殺し、物議をかもしている。警察の活動を監視する独立機関が事件を問題視する中、警察庁副長官は12日、犯罪の取り締まり強化のためには警官は積極的に発砲すべきだと発言した。

■「銃口のようなもの」が見えたと即発砲

 問題となった事件は今月7日、ヨハネスブルク(Johannesburg)北東のクリップフォンテイン(Klipfontein)で起きた。3歳の男児は、おじと一緒に駐車中の車の後部座席に座っていたところを射殺された。

 警察監視機関によると、警官らは、この車が駐車している住所に追跡中の殺人犯がいるとの情報を得ていた。警官の1人が、銃口に似たパイプ状の物体を見たため即座に発砲し、男児は即死したという。現場からはパイプも銃器も発見されなかったという。

 おじが地元紙に語ったところによれば、私服警官の1人が命令しておじを地面に押さえつけ、男児の遺体も地面に降ろされた。警官らはおじに向かって「おまえは容疑者だ」と叫んでいたが、何の容疑かは言わなかったという。発砲前に職務質問はなく、威嚇射撃もなかったという。

■犯罪撲滅には市民の巻き添えも仕方なし?

 この問題をめぐり、Fikile Mbalula警察庁副長官は13日、ケープタウン(Cape Town)で開いた記者会見で、「ろくでなしどもは撃つべきだ。取り締まりの難しい、救いがたい犯罪者のことだ」と発言。犯罪撲滅を目指す戦いの中では、罪のない一般市民が巻き込まれるのはやむを得ないとの見解を示した。

 南アフリカは世界でも有数の犯罪多発国で、統計によれば平均で1人あたり50人が殺害されている。現行法では警官に対し、本人または無実の第三者の命が危険にさらされないかぎり発砲を禁じているが、ジェイコブ・ズマ(Jacob Zuma)大統領は、もし容疑者が銃を所持していた場合は「目的は明らかだ」として、「先制銃撃」を警官に認めるよう提案している。(c)AFP