【8月28日 AFP】韓国の検察当局は27日、脱北者を装って入国し、軍将校らと性的関係を結ぶなどしてスパイ活動を行っていた北朝鮮の女性工作員を逮捕したと発表した。

 ウォン・ジョンファ(Won Jeong-Hwa)容疑者は、韓国の主要軍事施設や軍備に関する正確な配置や写真などを入手し、中国にいる工作員に手渡していたとみられている。

 捜査当局によると、ウォン容疑者の任務の1つは、韓国への脱北者としては最高位となる黄長燁(ファン・ジャンヨプ、Hwang Jang-Yop)元北朝鮮労働党秘書の居所を特定することだったという。黄氏は1997年に脱北し、現在も警察の保護下に置かれているが、北朝鮮の体制を厳しく批判している。

 ウォン容疑者はさらに、韓国情報当局とつながりのある韓国人2人を毒針で暗殺するよう指示されていたが、この計画は実行されなかった。

 ウォン容疑者は、北朝鮮で窃盗の罪で服役していた。後に亜鉛数トンを盗み、処刑される危険から中国北東部へ逃亡。親族の支援を受け帰国し、1998年に北朝鮮の国家安全保衛部(秘密警察)の工作員となった。

 同容疑者が初めて行った活動は、中国にいる脱北者誘拐の手はずを整えることだったという。

 韓国への入国は2001年。国家情報院(National Intelligence ServiceNIS)の依頼で、軍事施設を回って反共産主義について講義などを行ったが、この際に軍将校らと接触した。

 同容疑者と関係を持った将校のうち、機密情報の漏えいが明らかになったのは陸軍将校(25)1人で、この将校も拘束された。また、同容疑者の養父(63)も、活動をほう助した容疑で逮捕されている。

 ウォン容疑者が接触した将校の1人が通報したことから、韓国軍情報部は2年前から同容疑者を監視しており、前月、逮捕にこぎつけたという。(c)AFP