【8月1日 AFP】2001年に米国で炭疽(たんそ)菌入りの郵便物が政府関係者や記者らに送りつけられた事件で、関与が疑われていた研究者が死亡した。自殺したものとみられる。米ロサンゼルス・タイムズ(Los Angeles Times)紙が1日、報じた。

 自殺したのはメリーランド(Maryland)州フォート・デトリック(Fort Detrick)にある米政府の生物兵器研究所の研究者、ブルース・イビンズ(Bruce Ivins)氏(62)。イビンズ氏は、同研究所に18年間勤務しており炭疽菌に関連する研究を行っていた。

 イビンズ氏の友人がロサンゼルス・タイムズ紙に語ったところによると、同氏の死因は数種類の鎮痛剤を大量に服用したためだという。また、元同僚はイビンズ氏がうつ病の治療を受けており、自殺をほのめかすこともあったという。

 2001年9月11日の米同時多発テロ直後に発生し、米国民を震駭(しんがい)させたこの事件では、炭疽菌入り郵便物に触れた5人が犠牲となり、米史上最悪のバイオテロ事件となった。この事件で、イビンズ氏は米連邦捜査局(FBI)の捜査にも協力している。
 
  しかし、ロサンゼルス・タイムズが捜査に詳しい筋の情報として報じたところによると、FBIは同事件の容疑者としてイビンズ氏を近く起訴する見通しで、同氏もこの事実を知らされていたという。

 イビンズ氏の死の1か月前、FBIは、以前に炭疽菌事件の容疑者としていた別の男性との訴訟で、約600万ドル(約6億4500万円)の和解金を支払い示談が成立している。

 この直後から、イビンズ氏は研究所内での立ち入り区域を制限された上、9月に退職するよう迫られていたという。

 前年、FBIからイビンズ氏について事情聴取をうけたという同氏の兄弟、トーマス・イビンズ(Thomas Ivins)氏は、イビンズ氏は米政府からの圧力に苦しんでおり、自殺したとしても不思議ではないとロサンゼルス・タイムズ紙に語っている。「彼は自分を全能だと思っていた」。(c)AFP