【5月28日 AFP】オーストラリアで1922年に死刑となった当時28歳の男性の犯行とされた少女殺害事件が冤罪(えんざい)だったことが86年を経過して明らかになり、政府は27日、この男性に死後恩赦を与えた。

 事件はオーストラリアのビクトリア(Victoria)州で当時12歳だったAlma Tirtschkeさんが暴行されたうえ絞殺され、パブ店主コリン・キャンベル・ロス(Colin Campbell Ross)元死刑囚が強姦致死で有罪となった。1922年、同囚が28歳の時に絞首刑が執行された。同囚は無実を訴えながら絞首台に向かった。

 有罪の決め手は、ロス元死刑囚の家にあった毛布から発見された髪の毛数本だったが、近代的な検査技術を採用した最近の再捜査で、髪の毛が被害者の少女のものではなかったことが明らかになった。

 ビクトリア州のロブ・ハルズ(Rob Hulls)州法務長官は「誤審によって1人の男性が絞首刑に処された。真に悲惨な事件で、ほとんど不可解だ」と述べ、「恩赦は、ロス氏に対する有罪判決は深刻に疑わしいものだったという認識を示した」と説明した。

 上級判事らによる審理で誤審だったことが判明したことによる恩赦について、ロス氏の子どもや親族は歓迎している。娘のニース・ベティ・エベレット(Niece Betty Everett)さんによると、一家はこの件について一切語り合ったことがなかったという。

 ニースさんは、ある雑誌の記事を読んだ際に、父親と処刑された死刑囚が似ていることに自分で気づいただけだったと述べ、「殺人者の遺伝子を受け継いでいるのではないかという恐怖と疑いにかられ、子どもをもってからはますますそう感じながら、人生の大半を過ごしてきた。もうその影におびえなくて済む」と語った。(c)AFP