【5月7日 AFP】カナダの会計検査院は6日、入管当局が同国から国外退去処分を受けた4万1000人の記録文書を紛失し、ほとんどの場合、その後の調査も止めてしまっていたとする報告書を発表した。

 シーラ・フレイザー(Sheila Fraser)会計検査院長官は報告書の中で、紛失した文書のほとんどは、政治亡命を希望し調査のために一時的に入国を許可され、その後退去処分となった人びとのものであることを明らかにした。さらに同長官は紛失した文書に「治安と安全保障の脅威となる」人物の文書も含まれていた可能性を指摘した。

 一方、フレイザー長官は前回2003年の調査時に比べ状況は改善されているとしている。この年、移民関係業務が市民権・移民省からカナダ国境サービス庁に移管された。

 カナダ国境サービス庁は2006年から2007年にかけて、「カナダに高度の危険性をもたらす」犯罪者1900人を含む約1万2600人を国外退去処分にしたという。だが、フレイザー長官は、出国管理が不十分だったことなどで「居場所が不明もしくはカナダ国内に不法に滞在している人物」の数が増加していると指摘している。

 カナダ国境サービス庁は2007年9月現在、約6万3000人が強制退去処分を受けるか受ける予定だとしている。同庁は2万2000人の所在は把握しているが、まだ処分が決定していない残る4万1000人の所在は不明だとしている。同庁は「すでにカナダ国外へ退去した人びとを見つけるには多くの人員を必要とする」という理由で、ほとんどの事例を調査していなかったという。
 
 ストックウェル・デイ(Stockwell Day)治安相は、カナダ国境サービス庁はフレイザー長官の提案の多くを導入しており、現在は改善に向かっていると語った。(c)AFP