【2月13日 AFP】韓国の歴史的建造物、南大門(Namdaemun、正式名・崇礼門、Sungryemun)が全焼した火災で韓国当局は13日、放火の容疑者として拘束していた男について、正式に逮捕状を請求した。韓国国内では、国宝の保護に関し当局の神経が行き届いていなかったとの批判が起こっている。

 拘束されているのは放火の前歴がある69歳の男で、「チェ(Chae)」という名字のみ公表されている。これまでの取り調べで、土地の補償をめぐる行政の対応に不満を持ち、南大門に放火したと自供している。

 警察が発表した供述内容によると、男は公共交通機関に対するテロ攻撃を実行することも考えたが、死者が出ることを恐れて止めたと述べている。代わりに南大門への放火を選んだ理由は警備が手薄だったためとも話している。

 消失した南大門は石の基盤の上に立つ2階建ての木造仏塔建築で、韓国の国宝第1号。1398年に建立され、1447年に再建されて以降数回修復されているが、現在まで600年前当時の木材が残っていた。

 朝鮮日報(Chosun Ilbo)では南大門には夜間、寝場所を求めるホームレスが集まり、インスタント麺を作ったり酒を飲み、木の床の上で空き缶に火をつけて暖を取ったりしていた指摘している。また同紙は、侵入者を感知すると警告音を発する赤外線センサーが作動しても、警備を委託されていた民間警備会社が対応していなかったと非難している。同紙は、崇礼門の惨事は、起きるべくして起きたもので、穴だらけの行政システムが、崇礼門を火だるまにさせてしまったと論じた。

 次期韓国大統領の李明博(イ・ミョンバク、Lee Myung-Bak)氏は、南大門再建のための共同基金立ち上げを提案したが、対抗勢力やメディアからはこの案に批判が集まっている。現与党系の「大統合民主新党(United New Democratic Party)」は、李氏がソウル市長を務めた2002年から2006年の間、南大門への立ち入りを自由にしていたため、李氏にも今回の焼失の責任は一部あると批判した。(c)AFP