【11月20日 AFP】カンボジアで19日、旧ポル・ポト(Pol Pot)政権の最高幹部らを裁くカンボジア特別法廷(Extraordinary Chambers in the Courts of CambodiaECCC)に逮捕、訴追されたキュー・サムファン(Khieu Samphan)元国家幹部会議長(76)が、逮捕前に発行された著書のなかで大量虐殺への関与を否定した。

 2冊目の著書となる『Reflection on Cambodian History from Ancient Times to the Era of Democratic Kampuchea(カンボジア古代史から民主カンプチア時代の回想)』のなかで、同議長は「ポル・ポト政権は、常にカンボジア人民の幸福を念頭に政策を進めてきた」と弁明。同政権の「強制政策」を認めながらも、飢饉(ききん)の実態は深刻で緊急な農業改革を迫られていたと擁護した。

 政権の主導者、ポル・ポトについては「カンボジアの主権を守った愛国者」と評する一方で、同政権の政策に対しての責任はポル・ポトにあるとも認めた。ポル・ポトは、政権旧幹部らの新政府への投降が相次いだ1998年に死去している。

 キュー・サムファン議長は、これまでにも、ポル・ポト政権時代に犠牲者が出たことは知っていたとしながらも、同政権の「大量処刑」への関与を否定。犠牲者の規模の大きさを認識したのは、ごく最近になってからだと述べている。

 行き過ぎた共産主義政策に基づく1975年から79年のポル・ポト政権時代、同政権は「農業ユートピア」の建設を掲げ、数百万の都市住民を農村部へ強制移動させた。この間、過酷な労働や飢え、処刑などにより死亡したカンボジア人の数は200万人に上るとされる。

 特別法廷で被告として裁かれる旧ポル・ポト政権幹部5人のなかで、最後まで逮捕を逃れていたキュー・サムファン議長だったが、19日、高血圧の治療のため入院していたプノンペン(Phnom Penh)市内の病院から、警察車両により特別法廷の施設に身柄を移送、逮捕された。(c)AFP