【10月27日 AFP】チリの控訴裁判所は26日、故アウグスト・ピノチェト(Augusto Pinochet)元大統領のルシア・イリアルト(Lucia Hiriart)夫人(87)と子供らに対する公金横領での起訴を取り下げた。

 同裁判所は、4日に身柄を拘束した23人(6日に仮釈放)の大半について容疑を再審理。その結果、イリアルト夫人と5人の子供のほか、元私設秘書および元報道官に対する起訴についても取り下げた。同裁判所のJuan Eduardo Fuentes判事長が発表した。

 ピノチェト元大統領は、米地銀リッグス銀行(Riggs bank、本店ワシントンD.C.)と共謀して2500万ドル(約29億円)を不正に蓄財した疑い。この事件は、2004年の米上院による調査で、同銀行にピノチェト元大統領と家族名義の口座数百が存在することが発覚して明らかになった。

 1973年から90年までのピノチェト軍事政権下では、拷問などで政治犯ら数千人にのぼる死者が出たとされ、反体制派の殺害や公金横領容疑でピノチェト元大統領の責任を追及する裁判が続けられた。しかし元大統領は2006年12月に心臓発作のため91歳で死亡したため、判決は下されていない。元大統領の弁護団は、元大統領が高齢による認知症で弁護能力がないと申し立てていた。(c)AFP