【8月24日 AFP】イラクの首都バグダッドのイラク高等法廷で23日、1991年のイスラム教シーア(Shiite)派住民大量虐殺事件をめぐり「人道に対する罪」に問われている故サダム・フセイン(Saddam Hussein)元大統領の側近15人を被告とする裁判の公判が開かれ、フセイン元大統領のいとこで「ケミカル・アリ(Chemical Ali)」こと、アリ・ハッサン・アルマジド(Ali Hassan al-Majid)元国防相に息子を殺害されたシーア派の女性が証言した。

 公判3日目の同日、証言台に立った女性は証人保護のためのカーテンの後ろから、91年にイラク南部で起こったシーア派の蜂起に対する治安部隊の鎮圧作戦中、「ケミカル・アリ」自身が女性の息子2人をヘリコプターから投げ落として殺害したと語り、被告に激しい怒りをぶつけた。女性の家族は軍によって身柄を拘束され、後に息子が殺されたという。

 女性は「2人の息子と兄、めいを治安部隊が拘束したのが1991年3月3日。9日後に兄と姪が解放され、ペルシャ湾上空でアリ・ハッサン・アルマジドが私の息子たちをヘリコプターから投げ落として処刑した、と聞いた」と証言した。同事件の被告15人に対し、公判で証言した人物は6人目。

 同事件では、90年に侵攻していたクウェートから、米軍主体の多国籍軍によりイラク軍が敗走を余儀なくされた91年の第1次湾岸戦争直後、南部で蜂起したシーア派住民がイラク軍治安部隊に、最大で10万人虐殺されたといわれる。虐殺の現場となったのはナジャフ(Najaf)やカルバラ(Karbala)といったシーア派聖地、ヒッラ(Hilla)、バスラ(Basra)だった。

 蜂起したシーア派住民の多くは当時、米軍の支援を期待していたが、現米大統領の父であるジョージ・ブッシュ(George Bush)米元大統領は米軍に、クウェートからイラク国境を越えないよう進軍停止を命じた。反フセイン蜂起に参加したシーア派住民は、フセインの精鋭部隊である共和国防衛隊によって弾圧された。

 鎮圧を指揮した本裁判の被告15人のうち、当時の地位が最も高かったのがアルマジド元国防相。同被告および同じく元国防相のSultan Hashim al-Tai被告、さらに当時の作戦副司令官Hussein Rashid al-Tikriti被告はすでに、1988年のクルド人虐殺事件(アンファル作戦)における人道に対する罪により、すでに死刑判決が下され、近日中に控訴審の判決が下される予定となっている。(c)AFP/Jay Deshmukh