【7月25日 AFP】リビアで400人以上の子どもをエイズウイルス(HIV/AIDS)に感染させたとして死刑判決を受け拘束されていたブルガリア人看護師ら6人が24日、ブルガリアに到着した。6人は同日、国営テレビや地元ラジオ局の取材に応じ、今の心境を語った。

 看護師のValentina Siropuloさん(48)は、「苦痛と死の恐怖に満ちた8年間を生き抜いてこられたのは、私たちは無実だという信念を持ち続けたからに他なりません。全身全霊で自由をかみしめたいところですが、まだ呼吸さえ自由にできません。刑務所では呼吸さえ困難だったのですから」と語った。

 看護師のKristiana Valchevaさん(48)は、「この世に正義というものがないなら、神がいつかは正義を示してくれるはずだと信じてきました。神に感謝します。自由を取り戻し、新しい人生をスタートさせたい」と語った。Valchevaさんの年老いた母親は、空港で娘の姿をまのあたりにし、ようやく「解放されたこと」が実感できたと言う。「ようやく安らかにあの世に行くことができるわ」

 頬がげっそりこけた看護師のSnezhana Dimitrovaさん(54)は、「あそこで味わった恐怖を忘れたい。家族にも話したくありません」とした上で、「私はリビアが抱える社会問題のスケープゴートにされた」とリビア政府への怒りをあらわにした。自身が1998年から勤務したベンガジ(Benghazi)の病院でのエイズ大量感染については、「恐ろしいことでした。そんなことが起こるなんて。その後私たちの身に起こったこともです」と語った。

 また、救出に尽力したセシリア・サルコジ(Cecilia Sarkozy)仏大統領夫人への感謝も表明した。「彼女は、私たちを救出すると約束し、そして実行してくれた」

 最近ブルガリア国籍を取得したパレスチナ人医師Ashraf Juma Hajujさんは、「ブルガリアに感謝する。希望は決して死なないのだ」と語った。

 また、看護師のValya Chervenyashkaさん(55)は、喜びを表現しながらも、「8年間の戦いの疲れがたたって、精神的におかしくなっていくかもしれない」と真剣に語った。

 6人は収監中、電気ショックや殴打、犬をけしかけられるなどのさまざまな拷問を受けていると訴えたことから、ブルガリア政府をはじめ国際人権団体、欧州連合(EU)、米政府などが次第にこの問題に関心を示すようになっていった。

 刑務所内で自殺を図ったという看護師のNasya Nenovaさんは、「拷問には耐えられませんでした。解放された今はまだ気持ちが混乱していますが、幸せです」と語った。Nenovaさんの楽しみは、フランスの大学に通っているという20歳の息子に10年ぶりに再会することだという。(c)AFP