【ウィーン/オーストリア 26日 AFP】ウィーンで誘拐され、8年間、監禁されていた女性が保護された事件で、オーストリア警察当局は25日、DNA鑑定の結果、本人であることを最終確認したと発表した。女性は両親の元で新たな生活をスタートさせることになるという。
ナターシャ・カンプシュ(Natascha Kampusch)さん(18)は10歳だった1998年に行方不明となった。8年間の監禁中に性的虐待などを受けたかについて現在、調査中だ。
■国中が衝撃を受けた誘拐事件
カンプシュさんは、オーストリア東部ニーダーエスタライヒ州シュトラースホフで23日、監禁されていた家の地下室から逃げだした。誘拐の実行犯は、通信技術者のWolfgang Priklopil(44)。23日夜にウィーンで列車に飛び込み、自殺した。
警察当局によると、カンプシュさんへの事情聴取は、精神的なショックから回復するのを待って週明けの28日以降に行う予定。現在は安全な場所に保護されており、いつでも好きなだけ家族に会える環境にいるという。
母親の Brigitta Sirnyさんは、娘との再会を果たしたあとで、「赤ちゃんが生まれたようなものです。靴から歯ブラシまで、なにもかも一からそろえる必要があるんです」と語った。
この誘拐事件が起きた当時、オーストリア警察により過去最大規模の徹底的な捜査が行われた、国中がこの事件に大きな衝撃を受けた。
■犯人を「ご主人様」と呼んだ1年間
カンプシュさんが監禁中どのように扱われていたかについて、警察当局は公式発表を行っていない。一方、Kronen Zeitung紙によると、カンプシュさんが警察の調査員にこう述べたという。
「犯人のPriklopilは確かに犯罪者だと思いますが、私にはいつも親切でした。ただ、監禁後の1年間は、彼をご主人様と呼ばなければなりませんでした」
カンプシュさんは誘拐された日、犯人のPriklopilに車の中に引きずり込まれ、「おとなしくしろ、さもないと痛い目にあうぞ」と言われたという。
■ストックホルム症候群
地元ラジオ局に出演した心理学者は、カンプシュさんは「ストックホルム症候群」に陥っていると述べた。ストックホルム症候群とは、長期間監禁が続いた際、被害者が犯人に親近感を抱くという異常な心理状態のことだ。
女性警察官Sabine Freudenbergerさんはオーストリア国営テレビに出演して次のように語った。
「Priklopilはカンプシュさんに『君のことをずっと探していた』と言ったそうです。そして『あの日に誘拐できなかったら、別の日に実行していたはずだ』とも言ったようです。 誘拐されてから数年後まで、カンプシュさんは犯人の名前を知りませんでしたが、彼女にとっては父親のような存在でした。彼女に基本的なことから何もかも教えていたんです。衛生用品の使い方まで」
Freudenbergerさんは、カンプシュさんの知性と語彙の豊富さに驚いたという。
Priklopilはカンプシュさんにたくさんの本を与え、教育していた。また、カンプシュさんはラジオを聞き、テレビも見ていたという。
誘拐された当時の目撃者の証言では、Priklopil以外にもう1人、誘拐事件に関与している人物がいるはずだと、オーストラリアのニューステレビ局APAは報じているが、警察当局は、この件に関するコメントを拒否している。
心理学者らは出演した番組中で、Priklopilについて、世間に対して、欠陥のない人間であるかのように振舞う、サディスティックな完璧主義者だと説明している。
■両親との再会
カンプシュさんの両親は、彼女の痕跡で本人だと確認した。魅力的なブロンドの髪と青い目で、憂いのある表情を浮かべた女性に成長した娘を見て、父親のLudwig Kochさんは、現在の彼女は以前、警察のコンピュータで作成したモンタージュ映像にそっくりだと述べた。
KochさんはKurier紙の取材に対し「娘は私に『お父さん、まだ私のおもちゃの車をもってるの?』と尋ねました」と語り、そのおもちゃだけでなく、カンプシュさんの人形は全部とってあると、付け加えた。
警察当局の発表によると、カンプシュさんが監禁されていたのは、Priklopilが所有する家屋の車庫の地下にある、広さ5平方メートルほどの「地下牢」のような場所だった。
写真は、24日、警察当局が公表した監禁部屋に通ずるドア。(c)AFP
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