【11月30日 AFP】ニュージーランドで、川に転落した車から妻か息子かどちらか1人しか助けられないという絶望的選択に迫られた父親が、30日のTVインタビューに応じ、一家の悲劇を語った。

 29日夜、ステーシー・ホートン(Stacy Horton)さんが妻のバネッサさんの叫び声を聞いて駆けつけたとき、バネッサさんは川に落ちた車から脱出したもののおぼれかかっていた。13歳の息子、シルバ君が閉じ込められたままの車は、水面から4.5メートルほど下に沈んでいた。

「息子を助けようと、どうにか潜ろうとはした。けれど車に届かなかった。そこで妻を助けるのを優先した。岸まで連れて行き、妻を押し上げて振り向くと、水底に車のテールライトが見えた。あの子のためにできることは、もうなにもなかった。ただ息子が去っていくのを、受け入れるしかなかった」 と30日、ホートンさんはTVのインタビューで語った。

 事件が起きたのはニュージーランド北島の西岸、ワンガヌイ(Wanganui)に暮らすホートンさん一家の自宅近く。車は、草が生い茂った滑りやすい川岸から10メートル下の水中に転落した。

 同乗していたシルバ君の友人、ロバート・パーマー君が沈みかける車からまず脱出、ホートンさんの元に急を知らせに走った。「川で叫ぶ妻の声が聞こえた。彼が持っていた懐中電灯をひっつかんで駆けつけ、何も考えずに飛び込んだ」

 最初は車の場所まで潜ろうと試みた。「潜って、自分が車を開けて中に入ろうと思ったんだ。どのみち無理だったろう。妻も助からず、家族3人を失った娘たち2人が残されていただろう」

 ホートンさんがバネッサさんを救助した後に到着した警官も、沈んだ車に到達しようと試みたができなかった。アンドリュー・マクドナルド(Andrew McDonald)巡査は「その場にいた全員にとって、精神的に忘れられない大きな傷を残す事件だった」と嘆いた。(c)AFP