【2月18日 AFP】今月上旬に大西洋で、英国の「バンガード(HMS Vanguard)」とフランスの「ル・トリオンファン(Le Triomphant)」の両原子力潜水艦が衝突した事故について、フランスのエルベ・モラン(Herve Morin) 国防相は17日、原潜は探知されにくいように設計されている上、秘密裏に行動するため、双方の乗組員は衝突時に何が起こったのか分からなかったと述べた。

 事故原因について尋ねられたモラン国防相は、「あのような潜水艦の動きは他から探知できない。潜水艦が出す音は小エビが発する音より小さいくらいだ」と述べた。

 モラン国防相がフランスのテレビで語ったところによると、事故直後、仏潜水艦の指揮官は艦を水面に浮上させ「何かにぶつかった。おそらくコンテナだろう。(フランス西部の軍港都市)「ブレスト(Brest)に戻る」と言ったという。

「我々が事故を報告したところ、英国が、自分たちの潜水艦にも同様の事故が起きたと言ってきた。その後、英国側がフランスの潜水艦を調査し、彼らは2隻の潜水艦の間で何かがおきたと結論づけた」(モラン国防相)

 モラン国防相は、両潜水艦は特別な動きをしていたのではないかという指摘を否定した。また16日に事故が報道で明らかにされるまで、フランス海軍は事故を隠すつもりだったのではないかという指摘も否定した。

■国家間の調整阻む国家機密の壁

 原潜同士の衝突という前代未聞の事故が起きたことで、同盟国間で原潜によるパトロールの調整ができなかったのか、あるいはフランスが北大西洋条約機構(NATO)の軍事機構に全面復帰すれば安全性が高まるのではないかとの声が上がっている。

 しかし防衛関係者らは、国家機密である核弾道ミサイルの動きについて国家間で緊密な協力をするのは、非常に微妙な問題だと語る。ベルギー・ブリュッセル(Brussels)のNATO本部には加盟国の軍人や外交官が多数勤務しているため、情報流出を恐れて加盟各国は戦略的に最も機密度が高い原潜のニュースを出したがらない。

 あるフランス軍幹部は「核抑止力は純粋に国家の問題で、弾道核ミサイルを積んだ艦船の情報を(他国と)交換するなどあり得ない」と述べた。NATOの報道官も「NATOには加盟国が保有するこの種の潜水艦の動きを管理する役割はない」と述べた。

 ニコラ・サルコジ(Nicolas Sarkozy)仏大統領はフランスがNATOの軍事部門に全面復帰したとしても、フランス独自の核戦力には何の影響も与えないと発言したことがある。モラン国防相は今回の事故が前例のない非常にまれな事例であることを強調した。

 あるNATO軍将校はAFPに対し、「ただ運が悪かったというだけでは十分ではない」と語り、事故原因を追及すべきだと述べた。(c)AFP