【1月17日 AFP】数百年にわたって人は鳥のように天を舞うことを夢見てきたが、15日に米ニューヨーク(New York)でエアバス(Airbus)旅客機がハドソン川(Hudson River)に不時着した事故では、パイロットにとって鳥が大敵となる可能性があらためて示された。

 1988年以降、鳥の衝突で起きた航空機事故で200人以上が死亡している。米空軍は2007年だけで航空機と鳥の衝突が5000回以上発生したと報告している。また、仏航空当局によると、1912年から昨年までに、鳥との衝突で墜落した民間航空機は90機に上るという。

 ハドソン川に不時着したUSエアウェイズ(US Airways)旅客機の事故は、大型の渡り鳥ガンが衝突したものとされているが、大小にかかわらず鳥は高速で飛行する航空機にぶつかり、エンジンに吸い込まれたり、コックピットの窓を割ったり、あるいは飛行に欠かせない電子機器を損傷させることで知られている。

 航空機整備の専門誌の編集者、ジョーイ・フィネガン(Joy Finnegan)氏は、「タービンエンジンの内部は料理用ミキサーのような構造で、吸い込まれた鳥や鳥の群れは粉砕される」と語る。

 フィネガン氏は、「航空機の飛行が高速であるため、エンジン側も損傷を受ける。損傷が大きい場合にはタービン翼が破損し、破損したタービン翼がエンジンをさらに傷つけ、エンジンは推進力を失う」と解説する。

 この状況こそ、ハドソン川の事故で起きたことだと考えられている。事故では両翼のエンジンの推進を失いながらも、経験豊かなパイロットが技術と幸運で無事に機体を水面に不時着させることに成功した。非常に珍しい事故だという。

 一般的に、鳥との衝突は離陸直後や着陸直前が多いが、これはちょうど機体がさまざまな動作を最大能力で行い、エンジンも全開となる間とほぼ一致する。離着陸はパイロットや乗客にとっても、最も危険な瞬間にあたる。

 現代のジェットエンジンはかなりの衝撃にも耐えるよう設計されている。大半の空港では、渡り鳥の大群が近づかないよう監視されている。銃砲の威嚇(いかく)やタカで鳥を追いやる空港もある。

 さらに予期しない脅威を与える可能性のある動物もいるが、鳥が重大な航空機事故を引き起こすリスクは依然として残る。(c)AFP