【8月31日 AFP】(写真追加)パリのセーヌ川(River Seine)北岸にかかるアルマ橋(Pont de l'Alma)の下を通るトンネルは、1997年8月31日にダイアナ元妃(Princess Diana)が36歳の若さで亡くなった場所として、見逃せない観光スポットとなっている。

 トンネル周辺に美しく飾られた数多くの写真の中から、微笑む元妃の顔がのぞく。ここはいまでも彼女を慕う人々の巡礼の地だ。

 30日の晴れた朝、アルマ橋は、写真を撮ろうと肩を寄せ合う人、橋の壁に書かれた元妃をしのぶメッセージを読む人、薄暗いトンネルの入り口を覗き込んだりする人であふれ返っていた。

 橋には、さまざまなメッセージが刻まれている。一番新しいメッセージは、「10年がたった今も、世界はまだ悲しんでいる」と赤いインクで書かれている。その隣には「かわいそうなお金持ち、誰もが彼女を愛していた」。

 イタリアのパルマ(Parma)出身の男性は、27日の日付入りの写真に自身の名前とイタリア語で「今も愛している」とのメッセージを書き込んだ。カナダのモントリオール(Montreal)出身の女性は「あなたを忘れない」とシンプルにつづった。

「ダイアナ元妃は歴史的な人物。わたしたちの心の中で生き続けている」と語るのは、ダイアナ元妃の没後10周年をパリで過ごすためにポーランドのChodelから2000キロの道のりをバスでやってきた男性。元妃の事故死に関する記事が掲載された新聞に「愛している」とのコメントをつけて捧げた。

 英国では元妃の没後10周年となる31日、「People’s Princess(国民のプリンセス)」として慕われた元妃の追悼式典が王室によって行われる。 

 元妃の息子であるウィリアム(Prince William)、ハリー(Prince Henry)両王子、元夫のチャールズ皇太子(Prince Charles)、エリザベス女王(Queen Elizabeth II)らが、英国を永遠に変えてしまった一瞬ともいわれる悲劇を悼み、ロンドン中心部で厳粛な儀式を執り行う。

 パリでは公式行事は予定されていないが、トンネルの上の広場に据えられた黄金の炎のオブジェの下には、多数の花束や写真が捧げられている。

 この米国の「自由の女神(Statue of Liberty)」が掲げるたいまつのレプリカ「自由の炎」のオブジェは、ダイアナ元妃とは無関係のもの。だが、多くの観光客はこの「炎」を英歌手エルトン・ジョン(Elton John)による元妃の哀悼歌のタイトル「Candle In The Wind」のイメージと重ね合わせて、元妃の追悼碑的な存在とみなしている。30日早朝には、オブジェの土台を拭く女性、写真を撮る人々など、さまざまな姿が見られた。

 付近の生花店従業員は「きのうはバラが2本売れただけ。事故直後とは比べものにならない。前任者は大金を稼いだよ」と語り、訪れる人が年々減少していることを明かした。

 その一方で、多くの人々にとって事故現場はいまでも特別な意味を持っている。フランス西部ブルターニュ(Brittany)地方からきた母娘は、こう語っている。「彼女の死に心を動かされたので、この場所を訪れずにはいられなかった。多くのことを成し遂げた女性。本当に悲しい最期だった」(c)AFP/Catherine Jouault