【8月7日 AFP】サッカー五輪アルゼンチン代表がリオネル・メッシ(Lionel Messi)の北京五輪出場を強く主張し、サッカー界に波紋を呼んでいる。

 五輪連覇を目指すアルゼンチンを率いるセルヒオ・バティスタ(Sergio Batista)監督は、欧州チャンピオンズリーグ2008-09(UEFA Champions League 2008-09)予備戦の3回戦にメッシを出場させる意向の所属クラブであるスペイン・リーガエスパニョーラ1部のFCバルセロナ(FC Barcelona)との衝突を辞さない構えを見せている。

 バティスタ監督は「その選手(メッシ)はここにおり、チームにとどまるだろう。彼は木曜日(7日のコートジボワール戦)に先発出場し、残りの試合でも我々と共にあることを確信している」と語っている。

 バティスタ監督の挑戦的な姿勢は、スポーツ仲裁裁判所(Court of Arbitration for SportCAS)がクラブチームには五輪へ選手を派遣する義務はないとの判断を下した数時間後に明らかとなった。

 CASの決定は7日の男子サッカー開幕を前にアルゼンチンと共にブラジルにも重大な影響を与えることになる。

 バルセロナをはじめドイツ・ブンデスリーガ1部のヴェルダー・ブレーメン(Werder Bremen)とシャルケ04(Schalke04)は、選手は北京でのプレーが認められなければならないとする国際サッカー連盟(Federation Internationale de Football AssociationFIFA)の決定を不服としてCASに提訴し、新シーズンと日程が重なることを理由にバルセロナはメッシを、ブレーメンとシャルケはそれぞれブラジルのジエゴ・リバス(Diego Ribas)とラフィーニャ(Rafinha)を五輪に出場させないよう争っていた。

 CASの決定を踏まえてメッシはスペインに戻ることになるのかと問われたバティスタ監督は「現時点ではノーだ。彼と話をしたがチームと共にここにいたいと言っていた。今回の決定が参加チームに対しどのような影響も与えないことを望んでいる。全ての監督がメッシにはチームにいて欲しいと望む。願わくばバルセロナにはメッシがここにいられるような決定を下して欲しい」と語っている。

 また、CASの決定を受けてFIFAのジョセフ・ゼップ・ブラッター(Joseph Sepp Blatter)会長は「驚くと同時に失望しているが、我々は(決定を)尊重する。だが私はクラブに言いたい。『選手を五輪に参加させてください』と。これは五輪精神と完全に調和する団結行為であり、選手やファン、そして五輪のためにも素晴らしいことだ」とコメントしている。

 また、ブラッター会長は「FIFAの意見は変わっていない。五輪のサッカーのレベルは高く、特に若い選手にとっては国際経験を積むチャンスが与えられる。このことは選手の将来に大きく役立つ。これは誰の目にも明らかなので、このような経験から生じる利益は選手だけでなくクラブにももたらされる。CASが五輪の精神を考慮に入れなかったのは残念だ」と語っている。

 バルセロナとシャルケは男子サッカーの決勝が行われる23日までの五輪期間中に欧州チャンピオンズリーグ2008-09の予備戦3回戦を控えており、ブレーメンは15日のブンデスリーガ開幕にジエゴを必要としている。

 ドイツサッカー連盟(Deutscher Fussball-BundDFB)のホルガー・ヒエロニムス(Holger Hieronymus)氏は「我々は今回の法的事項に関しクラブと緊密に動いていたので、CASの決定には満足している。今回の件に関しFIFAは前段階で法整備に失敗し、新シーズン(2008-09)を前にクラブ側が影響を受けた」とコメントしている。

 また、国際オリンピック委員会(International Olympic CommitteeIOC)のジルベール・フェリ(Gilbert Felli)氏は「(CASの決定は)関与する選手にとって残念だ。彼らは五輪を夢見ていた。だが選手とクラブの間には明らかにいくつかの問題点がある。おそらく明快さに欠けているのだろう。我々は今後、規制がどのように実施されるのかを調べることになる」と語り、クラブと国のいさかいは選手にとって嘆かわしいことだとの見解を示している。(c)AFP/Dave James